|
|
「N・P・K」という3文字を見て、何の意味なのかすぐ分かりますか?正解は「National Plants Keeping」の略で、「国際」的な「植物」各種を「維持」するために新設された、国連組織を表す言葉です。
・・・すみません。ウソですm(_ _)m
正解は「作物に必要とされる、3大元素」のことです。すなわち、農家としては「肥料分」として重視する要素です。
中学校の理科で習ったかもしれませんが、Nは「窒素」、Pは「リン」、Kは「カリウム」です。人間で例えれば、窒素はたんぱく質、リンは脂質、カリウムはビタミン類に相当して、植物の中で作用すると言えばいいかもしれません。ちなみに、人間でいう炭水化物は、植物でいうと「空気中の二酸化炭素」になりますから、人間が「肥料」のように与えなくても問題はありません。(密閉したビニールハウス内に二酸化炭素を送り込む方法もありますが、一般的にそこまではしません。)
また、この他にはCa(カルシウム)やMg(マグネシウム)もあり「N・P・K・Ca・Mg」を合わせて「5大要素」とも言い、俺はそれらのバランスを考慮して肥料を与えています。さらに、人間同様「ミネラル」も必要で「マンガン、鉄、銅、亜鉛、ホウ素・・・」などなども「健全な生育」のためにはごく微量ではありますが必要とされています。
ただ、そこまで言うとキリがないので、このページでは、植物の「見た目の成長」に大きな影響を与える「窒素」だけのことに絞ります。農薬と同様「リスクとベネフィット」で考えると最も簡単なので、それで進めたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<窒素とアミノ酸>
さて、周知の通り窒素は、大気中に最も多く存在する元素です。だから、二酸化炭素と同じようにわざわざ与える必要がないかというと、そうでもないのです。というのは、植物は窒素を「単体として」は吸収できないからなのです。
「なぜか?」は、俺ら人間(ヒトとします)のことを考えれば早いでしょう。
昨今騒がれている「アミノ酸」ですが、動物だけでなく、植物も当然ながら同様に「アミノ酸」がいろいろ組み合った「たんぱく質」で成り立っています。アミノ酸とは何かというと、俺は化学とか分子構造とかに詳しくないので、ひとくくりに「窒素化合物」だと言うに留めます。一言で言えば、動物も植物も「窒素」がないと、体そのものを作れないわけです。かといって「ヒトは空気中から直接窒素を吸収できるか?」と言われれば、答えはノーですね。だって、もしそうなら「肉」を食べる必要がないからです。
そして、窒素を材料にして作られるアミノ酸の構造は、体のどこに使われるのかによって様々で、さらに生物が違えばアミノ酸の構造も当然違うわけです。
で、ヒトは基本的に「肉」を食べて、窒素を得ます。当たり前ですが、例えば「豚肉」を食べたからと言って、それが自分の体のどこかに「豚の肉のまま」くっついているわけじゃないはずです。まず、「豚という生物の肉となるために作られたアミノ酸」を、ヒトという別な生物の胃と腸が作用することで、「豚の肉」はいろいろ変化します(詳しい分解・消化・吸収過程は忘れました)。で、最終的には、豚肉が持っていた「窒素やその他の元素を組替える」形で、「豚という生物のアミノ酸」とは異なる「ヒトという生物のアミノ酸」に作り変えられて、「ヒトという生物の肉」になり体の一部になっているわけです。つまり、必要なのは「豚肉」でも「豚肉のアミノ酸」でもなく「そこに含まれる窒素やその他の元素」なわけです。
じゃあ、窒素その他が含まれるものなら何でもヒトの肉になりうるかと言うと、実際はそうでもないわけです。例えば、俺が調べたところ合成繊維の「ナイロン」には窒素が含まれてるみたいですが、ナイロンの生地を食べても、そこに含まれる窒素を「ヒトの肉」の材料に使うことはできないはずです。第一、ナイロンの衣類を見て、食べようとは思わないでしょ?体が吸収できるものかどうか、脳ミソはちゃんとわかっているわけです。
何が言いたいかというと、「人間と同じように、植物が吸収できる窒素化合物の種類は決まっている。」ということです。
これと同様で、植物の場合は、
「アンモニアか硝酸の形でしか窒素分を吸収できない」(他にも尿素とかありますが、尿素も結局はこの2つに分かれて吸収されるので除きます。)
ということになっています。ちなみに、アンモニアは「NH4」、硝酸は「NO3」で、どちらも「N」すなわち窒素が含まれていることが分かります。だから、当たり前ですが植物の根っこに「豚肉を直接」接触させても、植物はそこから窒素を吸収できません。
でも、豚肉を「土の中に」入れておくと話が違ってきます。土の中にはいろんな菌だのバクテリアだのがいて、「豚肉」を「アミノ酸」に分解してさらに分解や化合させ、植物が吸収できるアンモニアや硝酸にしてくれるわけです。植物の根っこを、ヒトの「腸」に例えれば、菌やバクテリアは、腸で吸収されるように分解する「胃袋」に当る仕事をするわけです。もちろん彼らは「植物のために」分解しているわけではありません。あくまでも「自分のために」分解しているわけです。例えば、ヒトのことで言えば、植物は俺らのために光合成して酸素を生み出しているわけではありません。自然界は、他の生物が「自分のために」動く過程で排出した副産物を、うまい具合に利用しあう形で成り立っているわけです。(だからホントは、人類すべてが「動物のヒトとして」「利己的に」生きて行くなら、自然や環境の問題は一気に解決すると思える・・・ありえないし話が違うのでやめます。)
さて、ヒトの場合は「分解する胃袋と吸収する腸」が一つの体の中にあります。が、植物の場合いわば胃袋が外にあることになり、分解は「他人任せ」状態なわけです。先に「菌やバクテリアは、植物のために分解しているわけではありません。」と書きました。植物が吸収するのは、あくまでも菌などの「他人」が「たまたま排出した副産物」なのです。だから他人の「気分次第」で、植物が必要なだけ窒素を吸収できるかできないかが決まります。「他人」の機嫌が悪ければ植物は「痩せすぎ」ることになり、逆に機嫌が良すぎれば「太りすぎ」ることになります。
もうお分かりと思います。豚肉で代表しましたが、それに限らず「有機肥料」というのは、植物が吸収できるかできないかという点で「不安定さ」「不確実性」をはらんでいるのです。(そしてしかも、化学肥料のように大量生産できないので値段も高い)
また、植物は人間と違って「欲望を抑える」ということをしつけられていませんし、農家がしつけることもできません。例えば、これから成長するというまだ小さい子供に必要な量以下の食事しか与えなければ、平均よりも体重が軽く痩せすぎで育ってしまうことになるはずです。逆に、子供は食べ盛りだからといつも満腹になるように食事を与え続ければ、その子は肥満になるはずです。どちらにしても、成長にとって好ましくないでしょう。それで親はどうするかというと、「腹8分目」というしつけをしたり、食事の量を調節したりして、子供の成長を「ちょうどいい具合に管理」するわけです。
農業で言うと、農家は「親」、植物は「子供」に相当します。親である農家は、子供である植物が「いい具合に生長するように」食事に相当する「肥料」の量を調節・管理する必要があります。人間の子供が、虚弱体だったり肥満体だったりすると、何かと「医療費」がはさむはずです。それと同じで、植物の調子が悪ければ親たる農家には、医療費に相当する「農薬費」がかさんでくるわけです。
だから、植物の食事として「有機肥料」をむやみに与える事は、人間で言えば、
「食材だけは親が買っておくが、調理して子供に食べさせるのは、全てベビーシッター任せ。」
「しかもそのベビーシッターはものすごく気分屋さんで、機嫌が悪ければ食材を目にしても何も作らないし、機嫌がよければやたら料理を作って満腹になるまで子供に食べさせる。」
という、無責任な親に近い行動であると言えます。「普通の親」は、自分の子供を育てるのにそんな無責任なマネはしないはずです。すなわち、有機肥料をやたら使用するというのは、こういう親と同じ事だと言えるのです。ただしこの場合ベビーシッターの機嫌さえ普通に保てば、子供も普通に食事をして育っていくのでしょう。しかし、「菌やバクテリア」というベビーシッターの機嫌を保つことは、現実のベビーシッターの機嫌を保つよりはるかに難しいことなのです。
まず、普通は「菌」なんて目に見えません。人間のベビーシッターなら、表情を見たり口調を聞いたりして機嫌を理解できますが、見えもしないし話す事もできなければ、機嫌を伺うこともできません。
そして彼らの「機嫌」、すなわち「有機物を分解して、植物が吸収できる状態にするスピード」は、主に土の中の水分・温度・酸素に関わっています。これらの調整を適切に行わなければ、植物は窒素不足になったり、窒素過剰になったりします。菌の「機嫌のちょうどいい状態」を保つには、水分・温度・酸素はそれぞれどのくらいがいいのか、ということはいろんな試験研究機関によってでだいたい分かっていますが、特に「温度」の制御が難しいのです。理由は、季節の存在です。有機肥料だけで育てる事を前提に考えてみます。
俺の場合、4月に苗を植えます。で、その1ヶ月前の3月ごろには肥料を土に混ぜておくわけです。先に豚肉の話をした通り、有機物はそのままでは吸収されませんから、菌のみなさんに「アンモニア」や「硝酸」まで分解してもらいたいわけです。
で、それをしてもらうために「機嫌の良くなる温度」まで土の温度を上げようと思っても、床暖房があるわけじゃないですから、そう簡単に温度を調節できません。ハウスを密閉して、温度を上げるしかないわけです。
ところが、これをしても、3月の山形はまだ寒いのです。確かに密閉したハウス内は、しばらくすれば「機嫌の良い」温度まで上げられますが、その温度を保てるのはほんの数時間。密閉していても、朝夕は確実に「機嫌の悪い温度」まで下がり、分解は止まります。つまり、十分な分解活動をしてもらうことが、どうしてもできないわけです。
その状態のまま、4月になると苗を植えることになります。つまり、苗という「生長初期の幼児」に、肥料という十分な「食事」を与えられないのです。5月のGW過ぎまで山形の朝夕は寒い日が続くので、その時期まで苗は「栄養不足状態」でなんとか育ちます。
そして5月半ばを過ぎたハウス内は、菌にとって「機嫌が良くなる」温度が続くようになります。よってしばらくは、苗の成長スピードに対応する形で「分解」が進み、親たる農家が特に「ご機嫌をとる」ことをしなくても、菌はちょうどいいスピードで活動をしてくれます。
ところが、5月下旬から6月に入ると「機嫌が良くなりすぎる」温度になります。菌の分解スピードは必要以上に早くなり、「腹八分目」を知らない植物も、満腹状態になるまでどんどん吸収して、「肥満体」になります。しかも悪いことに、ベビーシッターである菌は、いわば「食材」である有機物を、「ほとんど全て調理」してしまいます。
親である農家としては、例えば「与えた食材をちょうど良く食べさせていって、小学校入学まで育てて欲しい」と計画し食材たる「有機肥料」を土に混ぜていても、この時期の急激な分解・吸収で、いわば「幼稚園の途中で一気に食材を食べ尽くした」ような状態になってしまいます。その結果、子供である苗は太りすぎます。かといって、予定通り「小学校入学まではそれ以上食べさせない」つもりでも、与えなければ生長はほとんど止まってしまうでしょう。植物はヒトのように「ダイエット」させることができないのです。もしここで肥料を止めても、太った部分が痩せていくことはなく、その先に伸びる茎が「栄養失調状態」で細くなっていくだけなのです。
そしてこの不安定な状態の植物に、追い討ちをかけるように「梅雨」がやってきます。梅雨時期はどうしても湿気が多くなるので、カビの類の病気が発生しやすくなります。体の調子が悪い時に何かの病菌にさらされれば病気にかかるのは当然で、この時期には葉っぱに「カビ」が出始めます。
さて、このへんでやめます。以上のことから、有機肥料をむやみに使うことによる農家側のリスクは、
@作物にとって、「必要な時期に必要な量の」肥料を与えることができるのか、わからない
Aさらに、調節がうまくずに生育のバランスが極端に崩れれば、病害虫も発生しやすくなる
B人間にとって、化学肥料に比べてやたら高価なので、費用がバカにならない
というようなリスクがあります。俺に言わせると、これらはものすごく恐ろしいことです。「ベビーシッター」のご機嫌を、確実に伺える方法があれば、また話は別ですが。
逆に、農家のベネフィットはどうでしょうか。
@有機肥料を使用すると「美味しくなる」
A化学肥料よりも環境に優しい
B菌やバクテリア等を活かして、「健全な土」にすることができる
などが言われます。まず、@については「農薬のこと」のページで触れたので、同じですから言いません。「美味しい」という「感覚」のことですから。
Aですが、先に書いたとおり、有機肥料は「アンモニア」や「硝酸」になって植物に吸収されます。で、特に環境、あるいは健康にも悪いと言われているのが「硝酸」(硝酸態窒素と言われます)の方です。ここまで読まれた方ならお分かりの通り、「ベビーシッター」の機嫌次第では、一気にやたら大量の分解が進み、植物が満腹状態になるまでに至ります。人間の胃袋にも限界があるように、植物の窒素吸収量にも限界があります。そうすると、吸収し切れなかった分の「硝酸」は、結局「土」という環境中にほったらかしになるので「有機肥料だから環境に優しい」とは言い切れない事は自明です。また、どのぐらい根拠があるのかわかりませんが、硝酸態窒素が多い農産物を食べるのは、発がん性の観点から良くないとも言われます。これも同様に、一気に大量吸収された硝酸は植物体内で蓄積するので「有機肥料だから硝酸態窒素が少ない作物になる」などとは保証しきれないのです。加えて言うなら、農家にとって「環境に優しい」などということは現実的には全く利益の無いことですし「自然と直接関わり影響を与える作業をする農家なら当然の義務だ」などと言われても、それは違うと考えています。この話は、次の「その他」に書くことにします。
最後のBです。そう思いますが「使用する肥料分を全て有機肥料で」とまでしなくてもいいと考えています。確かに、化学肥料ばかりを使用すると土が固くなって根が伸びにくくなったり、あるいは有害病原菌が多くなったり、その他いろいろ弊害は言われます。そういう意味では、ある程度の有機物・有機態肥料を使用する事も必要と思っていますし、実際にそうしています。しかし、100%有機肥料などという「大きな不確実性」を背負ってまで対処することではないと考えています。「その他」のページにも書きますが「最小限の環境負荷」で「最大の結果」を目指すことは、どの産業でも同じことなのです。
次に化学肥料の場合です。農家のベネフィットを書きます。
@安く済む
A必要な時期に必要なだけ、しかもほぼ確実に与えられる
この2つです。安い理由は、他でも何度か触れましたが「工業的に大量生産できるから」です。Aは、例えば窒素肥料に使われる「硫酸アンモニウム」は、土に与えられると水分や温度などにほとんど左右されずに硫酸とアンモニアに分解され、植物に吸収されます。ですから、菌など「気分屋のベビーシッター」に食事を任せなくても、親たる農家が「責任を持って」世話することができ、適切に使用すれば「健全に」成長させることができるのです。(有機肥料とて、最終的には硝酸やアンモニアになって吸収されることをお忘れなく)
また、有機肥料は食べる前に調理が必要な「食材」のようなものだと先に書きましたが、これにあわせて言えば、化学肥料は「レトルト食品」あるいは「栄養ドリンク」のように、調理という「手間」がいらないものだと言えます。
確かにレトルト食品は、親として手抜きであるような気がしますし、食事の全てをそれだけで済まそうとすれば、健全な育成をはかるのは難しくなってくるでしょう。しかし、現実に子供を育てる場合、時にはレトルトなどで手間を省くことによって親は楽になれます。そして農家は、作物という特に「大勢の子供」を一手に引き受けていることになります。調理の必要な食事も与えはしますが、手間を省いて食事の半分くらいはレトルトで済ませても、状況から考えて当然だと思います。しかもこのレトルト食品たる化学肥料の場合、あらかじめ「各レトルトパック」に含まれる栄養分を考慮して、必要な量だけ必要な時に買って用意しておけば、ベビーシッターの機嫌に関係なく、計画的な食事をとらせることができるわけです。
逆に、化学肥料による農家のリスクは
@安い事もあり、肥料を与えすぎになりがちで、生育バランスも壊しがちになる
Aやりすぎると、硫酸などが土に残り、長年続けると結果として作物の生育も悪くなる
ということです。レトルト食品は、暖めて封を切れば子供でも簡単に食べられるわけで、買い置きしすぎると子供は勝手にバクバク食べ過ぎることになります。しかし、ベビーシッターの機嫌に関係なく確実に食事を与えられるため、少なくとも子供を「飢え死に」させる心配はないので安心です。そして化学肥料というレトルト食品は安いです。この2つの理由により、親である農家は喜んで買い与えすぎになりがちです。
しかし、レトルトは手間がかからないし確実に食事として与えられるからといってずっとそうしていくと、今度は土という「家庭環境」が悪化します。悪化した家庭環境では、子供は家に「根付きにくく」なり、健全な生育も望めないでしょう(あぁ、自分で書いてて耳が痛い・・・)。作物の「地上部」は、高温や低温・病原菌などといった「外部の厳しい環境」にさらされているわけですから、せめて「地下部」である土ぐらいは、親である農家が「家庭」として落ち着いて安らげる場所にしてあげないと、子供である作物としては「おかしくなって」しまうわけです(あぁ、やっぱり痛い・・・)。
長くなってきたし、何よりも「自分が痛くなってきたので」しめましょう。 肥料は、有機肥料ばかりでも不安要素がたくさんあってどうかと思いますが、化学肥料ばかりでもやはり土を壊すのでよろしくありません。ただお互いに全否定しあうのではなく、それぞれの特性を理解した上で、必要に応じた使い方をしていくのが、「まともな農家」として続けていく上で一番良い方法だと考えています。
|
|
|
|